学名問題
1年以上放置してました....。面目ございませぬ。

超ひっさびさの記事です。

Chelodina canniの記載者の1人でもあるScott Thomson氏が爬虫類の学名記載に関するブログを始めました。
これがなかなか興味深い内容で、ややこしい命名の混乱を解説してくれています。

1回目の内容は特に重要と思われるので、要点だけ紹介します(ご本人の了承済みです)。

ご存知の方も多いと思われる、いわゆる「ジーベン」といわゆる「オブロンガ」の学名の問題です。

 まずはいわゆる「ジーベン」の問題。この種の現地の英語名は「Northern Snake-necked Turtle 」ですが、結論から言えば、命名規約的に現在有効な学名は以下の通りです:
Chelodina (Macrochelodina) oblonga Gray, 1841
つまり種名としての"C. siebenrocki"はもちろん"C. rugosa"も無効だということです。これは、これまでC. oblongaの模式標本だと思われていたものがよくよく調べたら現在C. rugosaなどと呼ばれていたNorthern Snake-necked Turtleのものだったからです。種の記載は根拠となる標本が全てに優先します。GrayがC. oblongaとして記載したのが1841年、OgilbyによるC. rugosaの記載が1890年、さらにWernerによるC. siebenrockiの記載が1901年ですから、この中で最も古いGrayの記載のみ有効で、後の2つはsynonymとして抹消されることになります。したがって、C. oblongaの記載は標本の実物(”いわゆるジーベン")が優先され、名前の方が入れ替わるということです。
 ということは、日本で「ジーベンロックナガクビ」または「チリメンナガクビ」と言われていたものは学名通りに呼べば「オブロンガ」になってしまいます。この種は今後さらに種分割されていく可能性がありますが、「ジーベンロック」「チリメン」はいずれも旧学名に由来する和名なので、当面の和名は「キタナガクビ」が妥当だと思いますがいかがでしょうか。分布で名付けておけば今後の命名変更でも影響受けにくいかと...^_^;;

 次がいわゆる「オブロンガ」の問題。
命名規約的に現在有効な学名は以下の通り:
Chelodina (Macrodiremys) colliei Gray, 1856
こちらに関してはScott氏は新たな英名は、「South-western Snake-necked Turtle 」を提唱しています。これまでよく知られていた種名がNorthern Snake-necked Turtle「キタナガクビ」に取られてしまったので、正しい標本で記載していた最古の学名collieiが復活するということです。
 これまた日本でも「オブロンガ」という通称でよく知られていたわけですが、それは昔の「ジーベン」を指す学名なので、今後は使うのを控えた方がよいと思われます。和名が学名には由来しない「コウホソナガクビ」で影響を受けないのはひとまず安心です。それにしても「オブロンガ」というなんともインパクトのある名前が使えなくなるのは正直残念ですね。「コリエイ」ってなーんか迫力ないし...^_^;;;

 もちろんScott Thomson氏の目的はあくまで記載の混乱を正すことで、呼称を混乱させることは本意ではないため、ICZN(動物命名法国際審議会 )に模式標本よりこれまで通用している学名を優先させる特例適用を申請しているようですが、受理されていません。したがって、この状況では現在の模式標本が全てに優先するため、規約上紹介した命名になるというわけです。

ちなみにMacrochelodinaMacrodiremysはいずれも現状では亜属扱いだそうです。
それにしてもややこしいですね。

キタナガクビ(旧称チリメンナガクビ)Chelodina oblonga
これですぐに実物を思い浮かべてもらうようになるまでは時間がかかりそうです。

とは言え「オブロンガベビー大量入荷!」なんて広告で書かれてたら、やっぱり当分、ヒエーっヽ(ill゚д゚)ノ てなりそうです....。

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写真は9月生まれのヒガシナガクビ(Chelodina longicollis)。

同じ内容の記事をFacebookのナガクビグループに投稿したんで、せっかくだからこちらのも記事にして載せてみました。これがブログ継続のリハビリとなるか...^_^?!!
# by acanthochelys | 2014-10-14 01:58 | その他のナガクビ類
5年ぶり
2008年に初入荷、その後トンと音沙汰のなかった種が入って、ごくごく一部で話題になりました。

ウォレルマゲクビ(Emydura s. worrelli)。ウチにいるその初入荷のときのコの近況です。
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全体的に地味〜な色合い、虹彩には黒いラインが入ります。側頭部のラインは、肉眼ではほんのり赤いです。

それほど頭部は大きくなっていないのですが、オスだからかな〜と思ってます。
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キンバリーマゲクビ(Emydura australis)(上)と比較しちゃうと、やはり地味渋です...。
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おけはペレットを食べるマッコ(Chelodina mccordi)ベビーたちの動画です。ここまで育てると手放すのもったいなくなりました....。
http://youtu.be/T_z1aMLwXCw

Today's show:
David Bowie
05/10/04
Starlight Theatre, Kansas City, MO
# by acanthochelys | 2013-09-16 01:01 | マゲクビガメ類
おそるおそる
おそるおそるログインしております。
前のカキコからなんと3ヶ月空いてしまいました...。このブログ始まって以来の放置期間でまことに恐縮です。

その間に、九レプがあったりCITESの変更があったりで、気づけばとうに梅雨は過ぎさりすっかり季節は真夏ですね...。

実は最近長年飼っていたコに立て続けに逝かれてしまい、しかも自分の不注意だったこともあり、ちょっとガックリ来てたりしてました。

とりあえず、カメたちの近況でも....。

職場のチリメンナガクビ(Macrochelodina rugosa)、ちょっと前に水換えしたとき甲羅もブラッシングしてあげて、女っぷりが上がりました。
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王国でハッチしたクロハラヘビクビ(Acanthochelys spixii)、こんなに大きくなりました。国内某所では繁殖が軌道にのったとかいうウワサです...。
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海洋堂の古田悟郎さんとこで殖されたChelodina sp.、なにげに本ブログでは初登場かも。
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かたくなにペレットには餌付いてくれません。

最後は昨年繁殖成功したトゥルカナ(Pelusios broadleyi)のペア。
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昨年はオスのDVがひどくてメスの頚がガビガビにされてたので、冬の間は分けて、春頃から同居させてます。写真のような感じでよしよしと思ってよく見るとメスが上になってる.....。道理でメスの頚が全く傷つかないなーと思ってたんですよね。今年はダメかも...。

ちなみにロンギとアダンソンは卵が取れてて白濁してるのもあります。今年こそと期待したところです。

Show of the day:
The Rolling Stones
06/29/13
Glastonbury Festival, Pyramid Stage,
Worthy Farm, Pilton, Somerset, UK
# by acanthochelys | 2013-07-13 22:22 | その他のナガクビ類
ウォレル脱皮
桜の季節も過ぎ去り、新年度に入ったと思ったのに、既にあっと言う間に4月も半ば....。

屋内のカメたちにはほとんど変化がないですが、ウォレルマゲクビ(Emydura s. worrelli)が久々に脱皮しました。
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例によって脱皮前後比較写真でも。

脱皮前
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脱皮後。
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頭部のラインがほんのり赤いところがチャームポイントです。
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あんまりイジってたら、怒り出しちゃいました。

オマケはトゥルカナハコヨコ(Pelusios broadleyi)のヤンママ、
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ダンナのDVがひどいのでここんとこ別居させてます。いろんなハコヨコの雑居女子寮で平和に暮らしています。とは言え、今年もぜひとも殖えてもらいたいので、間もなくはじまる外飼いでは有無をいわせず同居させます...(汗)。

Show of the day:
Crazy Ken Band
06/18/10
Bigcat, Osaka, Japan
# by acanthochelys | 2013-04-13 20:43 | マゲクビガメ類
さいてす
3月も後半に入り、すっかり春らしくなりました。
3月と言えば、ハープホビィストには大変気になるCITESの会議がバンコクで行われていました。

議題は全部で71、このうち爬虫類は16議題でそのほとんど(11議題)がカメ目でした。ちなみに両棲類は3議題でした。

全般の話はどこかでキチンと解説されるでしょうから、曲頚類専門サイトとしては一番気になるマッコードナガクビ(Chelodina mccordi)に関する議題を解説します(多少意訳が入ってるかも…)。
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28番目の議題として、米国が「マッコードナガクビを現行の付属書2から付属書1への変更(つまり昇格)する」ことを提案していました。
(生息域の国でもないのに余計なお世話な気もしますが…)
会議での議決としては以下の通りです:
An amended proposal to retain this species in Appendix II with an annotation “zero export quota from the wild” was adopted together with two accompanying draft Decisions which can be found in document CoP16 Com.I.14.
野生個体の輸出割当をゼロとするという条件付きで現行の付属書2のままとすることになりました(一安心)。ただし、これにはさらに2件の付帯条項が議決されています。
Directed to the Animals Committee
Dec. 16.XX
Include the Roti Island side-necked turtle (Chelodina mccordi) as matter of priority in the Periodic Review of the Appendices at its 27th meeting.
第一は、「次回第27回CITES動物委員会会議でもマッコードナガクビは重要案件として継続的に審議すること」という動物委員会宛の議決。
Directed to the Secretariat
Dec. 16.XX
Liaise with the range states of the Roti Island side-necked turtle (Chelodina mccordi), Indonesia and Timor Leste, to compile information relevant to the Periodic Review of the Appendices for review by the 28th meeting of the Animals Committee.
第二は、「今後の動物委員会での審議に必要な情報を、生息域であるインドネシアと東チモールと連携して集めておくこと」という事務方宛の議決。
以上です。

つまり
「マッコはとりあえずCITES IIのまま、でも野生個体は流通禁止だよ。あと、生息地の情報を今後も精査して、これからもマッコは定期的に議題に載せるからね。」
ということです。マッコのように繁殖個体でほぼ完全にペットニーズをまかなえる種類は、大変妥当な議決だと思います。今後の個体数回復にはなんといっても生息環境の復元でしょうが、場合によっては繁殖個体の放流も考えてもいいのではないかと思います。本来の生息域が小さくて遺伝的多様性がそれほどあるとも思えないし、いわゆるセーフネットとしては十分すぎる個体数がつねに飼育下で維持されているわけですから。

とりあえず一安心でうちのマッコたちも喜んでおります。
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3月中旬なのに福岡では桜がかなり咲いてます。今週末あたりは花見が盛り上がるでしょう。
おまけは、この陽気で完全にお目覚めモードのロンギ(Chelodina longicollis)たち。
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今日は似たような写真ばかりですね...。

Show of the day:
David Bowie
12/12/78
NHK Hall, Tokyo, Japan

# by acanthochelys | 2013-03-19 17:32 | マッコードナガクビ