Africans Revised
今日から3月、福岡は既に梅が満開です。

最近出たアフリカ曲頸類の包括的な分子系統解析の論文を発見しました。著者には業界の有名人の名がちらほら。

これまで形態から言われていた従来のグループ分けは
  adansoniiグループ(アダンソン、トゥルカナ、ガボン、マラン、ヒメ)
  subnigerグループ(上記以外)
とか
  ガボン単独
  クロ単独
  ノコヘリ単独
  ウスグロ単独
  それ以外全て
でした。

で、今回核とミトコンドリアの合計約4kbの塩基配列比較から描かれた系統図がこちらです。
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from
Fritz U, Branch WR, Hofmeyr MD, Maran J, Prokop H, Schleicher A, Siroky P, Stuckas H, Vargas-Ramirez M, Vences M, Hundsdorfer AK. Molecular phylogeny of African hinged and helmeted terrapins (Testudines: Pelomedusidae: Pelusios and Pelomedusa). Zoologica Scripta a 2010 The Norwegian Academy of Science and Letters, 40, 2, March 2011, pp115–125.

まず
 castaneus大グループ(一応記載の最も古い種名で呼んでいくことにします)
 marani大グループ(マランのみ)
 sinuatus大グループ(ノコヘリハコヨコのみ)
 subniger大グループ(ウスグロ、オカバンゴ、ウペンバ)
の4大グループに分けられます。

次にcastaneus大グループが
  castaneus中グループ(クリイロ、チャピニ、アダンソン、トゥルカナ、ヘンゲ、セウネ、キバラ、ガボン)
  nanus中グループ(ヒメのみ)
  niger中グループ(クロ + クプラタ)
の3つの中グループに分けられます。

さらにcastaneus中グループが
   castaneus小グループ(クリイロ、チャピニ、アダンソン、トゥルカナ)
   rhodesianus小グループ(ヘンゲ、セウネ、キバラ)
   gabonensis小グループ(ガボンのみ)
の3つの小グループに分けられます。

さらにさらにcastaneus小グループ(クリイロ、チャピニ、アダンソン、トゥルカナ)が(クリイロ + チャピニ)と(アダンソン + トゥルカナ)の2群に分かれます。ただしチャピニはクリイロの変異の中におさまっているので、フルスピーシーズとするのは疑問だと書かれています。またrhodesianus小グループ(ヘンゲ、セウネ、キバラ)が(ヘンゲ + セウネ)とキバラの2群に分かれます。

という具合になかなか複雑な系統関係ですが、全体としてはなんとなく納得できるような気がします。Pelusios属全体では、アダンソンとトゥルカナの2種が最も近縁で、マランとそれ以外全てが最も遠いといった具合で、思った以上にいろいろな段階で分岐しています。かなり分岐の古いものもあるので、今後さらに属分割されたりすることもあるのかもしれません。

この論文の最大の問題点はビクトリアハコヨコ(P. williamsi)が含まれていないこと。一応系統樹には含まれていますが、クリイロの枝の中に紛れ込んでしまっていて、おそらくクリイロの同定間違いの標本からの塩基配列と思われます。もしも今後正しいビクトリアの配列が解析されたら、casteneus中グループのどこかに付くのではないかというのが、ぼくのあてずっぽな予想です。

 Pelusios属の系統関係もさることながら、Pelomedusa属の分岐の深さ(つまり枝の長さ)にも注目です。Pelomedusa属は、亜種はさておき、subrufa一種のみしか知られていません。しかしその中でのバリエーションはとても大きく、ヘンゲとセウネの種間差や、ウスグロ/オカバンゴ/ウペンバの3種間の差よりも大きいのです。ちなみに同じ著者たちが昨年出したPelomudusaの種内変異の論文でも指摘していましたが、これまで言われているような亜種分けはDNA解析からはまったく支持されず、そのかわりPelomudusaの各地域集団は、南アフリカやボツワナ、マワウイなどの南部集団(図中のIXとVIII)、紅海沿岸部の東北集団(図中のVIとVII)そして、コートジボアールからケニアに至る北部集団(図中のI〜V)の3つに大きく分けかれるようです。この3群間の違いはとても大きいので、今後種/亜種として分割されることになっていくと思われます。つまりPelomedusa属はモノタイプではなくなるということですね!

 おまけはビルの家で見せてもらった、ウペンバハコヨコクビ(Pelusios upembae)。
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Pelusios upembae from Bill McCord's collection.
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Thanks Bill!
日本未上陸の本物(笑)です。
腹甲が黒いところも全体的なプロポーションも、分子系統で最も近縁と示されたオカバンゴと確かによく似ています。

Show of the day:
Frank Zappa
10/29/76
The Spectrum,
Philadelphia, PA
by acanthochelys | 2011-03-01 18:26 | ヨコクビガメ類
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